情熱なる深海魚



マイクを水に沈めたときみたいな音がするんじゃないかとレッドは思っている。


耳のなかを舐められるとどんな音が聞こえるのだろうと、ふと思ったのだった。舐めたこ とはバカみたいにあるが舐められたことは一度もない。できれば一生ご免願いたいところだが、 その音がどんなものなのか、知りたい気持ちはかわらない。


ちょっとこいつに聞いてみようか、絶賛体験中なのだろうし。
頭のなかに涌きあがる馬鹿けた提案を、絶賛体験中のヒィッツカラルドにぶつけようとし たがやめた。なにをどう経由してその考えにいたったのかを、一回のまばたきで忘れてし まったのでやめた。
その代わりに音をたてて耳のふちを吸い上げれば、ヒィッツカラルドは歯のすき間から小 さく声をあげる。悲鳴にもならない薄い声。


「ひ ぁ」


今すごくやらしい事をしている。ためしに思ってみると確かにそんな気がしてくる。 もっと残酷な事をして、鬼畜だ人でなしだと言われるほうがよほど性に合っている。


「レッ、」


ヒィッツの声が途切れた。もう一度耳を舐めたからだった。噛んで舐めて舌をねじこんで 時々たまにキスをする。この行動がすべて、「耳を噛み切らないようにする為」だけに行われ ている事をヒィッツは知らない。目の前にあるものと向かい合いながらも、それを壊さない ようにするためだけにレッドがとっている行動。ヒィッツカラルドは稀に体を強ばらせては 声をあげる。この声だって、悲鳴以外ならなんだっていいのだ。


「服脱ぐとか、お前なんかしら次のステップ踏まないと、俺一生このままだからな」
「ふざけるな馬鹿」


自分の舌の温度しかわからない。とけるような熱さしか感じない。
レッドは器用にもそのまま舌打ちをした。ヒィッツカラルドはそれにすら反応する。


「あ」
「ド変態」
「ちが…っ」


ヒィッツカラルドがうっすらと目をあける。感情のない目。溶けた雲のような目がレッド をい抜く。腹が立つ。


「ヒィッツ、お前涙目」
「ば、なわけ がない だろう」


本当はもっと別に、言おうとしていることがあるはずだった。それをいちいち考えるのも 面倒なので、かわりに舌をねじこんでいる。


増えも減りもしないものばかりを奪ってゆく。









ここからが本題です。
この勢い短文をもとに、巴カルノさんがヒィッツ側の小説を書いてくださったんです、よ…!
うちの被害者ヒィッツがかわいく変身です。魔法です↓
惑いの岸辺














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